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ZRレジンは、放射性医薬品用途としてのZrをYターゲット物質から分離する際に用いられるヒドロキサマートの機能をベースにした製品です。

 

Dirks氏らは、硝酸、塩酸、シュウ酸における元素に対する選択性において、このレジンを特徴づけました。

 

Figure1~5は結果をまとめたものです。

 

Figure 1: 塩酸におけるZRレジンのDw値

 

Figure 2: 塩酸におけるZRレジンのDw値

 

塩酸濃度(0.01~10M)の幅広い範囲で、Zr、Ti、Nbに対して高い選択性を有します。Fe(Ⅲ)に関しては、低・高濃度の塩酸で高い保持率を示しますが、1~6M塩酸では保持率は低くなります。ScやYに対しては予想通り選択性があまりよくありません。YからZrの分離や、ScからTiの分離に使用できます。

 

ZRレジンはGaやGeに対しても興味深い選択性を示しています。Gaは低濃度 (0.1M以下) や高濃度(5M以上) の塩酸で保持されますが、Zn等は全く保持されていません。中間の濃度、特に1~2M塩酸では保持されません。対照的にGeは0.1Mを超える塩酸でよく保持されます。特に2M塩酸では、GaよりGeに対する選択性が極めて高くなります。

 

Figure 3: 硝酸におけるZRレジンのDw値

Figure 4: 硝酸におけるZRレジンのDw値

 

硝酸においても似た選択性を示します。Zr、Ti、Nbは5Mまでの硝酸でよく保持され、Fe(Ⅲ)は1M までの硝酸でよく保持されます。硝酸濃度が高くなると、硝酸による抽出剤の分解が始まり、レジンの色は白から茶色へ変色します。従って、これらの条件では試験した陽イオンにはそれほど高い選択性を示しません。塩酸と同様に、硝酸においてもYやScに対する保持率がそれほど高くありません。ただし、高濃度の硝酸では、Ga(とNi/Co)を超える高い選択性をGeに対して示しています。

 

Figure 5: シュウ酸におけるZRレジンのDw値

シュウ酸塩はZrの強力な鎖化剤であるため、Zrの溶出によく使用されます。0.05Mを超えるシュウ酸では、ZRレジンのZrに対するDw値が大きく減少します。つまりZrの適切な溶出剤となります。Nbは0.05Mシュウ酸においても高いDw値を示しているため、シュウ酸の濃度を調製することによってZrとNbを分離できるということがわかります。

 

得られたDw値をもとに、放射性医薬品用途の放射性核種の製造にZRレジンが使用できるかに重点をおいて、いくつかの溶出試験を実施しました。

 

Dw値に表れているように、ZRレジンは幅広い塩酸濃度においてZrを保持します。洗浄条件はHolland 氏らが推奨する条件に近いものとしており、レジンを充填後、まず4 x2.5 mL の2M塩酸で洗浄、その後4 x 2.5 mLの水で追加洗浄します。Zrは最終的に0.05Mかそれ以上の濃度のシュウ酸で溶出します。

 

Figure 6: 溶出試験: 100mg ZRレジン、フラクションはICP-MSで分析

 

特定の条件で、Y、Ti、FeからZrをきれいに分離することができました。YとFeは充填や洗浄の最中に除去され、Ti はZrレジンに保持されて残ります。Zrは0.05Mシュウ酸において~2 ベッドボリューム(BV) で定量的に回収されます。安定同位体Yが300mgまで存在している状況でも、高い化学収率を得ることができます(100mgのZRレジンを使用)。

Figure 7: Yターゲット(300mg以下)からのZr分離の推奨技法

 

Zr-93の定量や、TK400レジンと組み合わせたFe/Nb/Mo の分離(例:廃炉サンプル)等の、放射分析へのZR レジンの応用についても現在試験中です。ZRレジンの別の重要な用途として、被照射Zn ターゲットからのGa-68の精製があります。サイクロトロンでのZn-68(液体または固体ターゲット)照射によるGa-68製造法は、高レベル放射能の頻繁な製造を可能にするため、Ge-68ジェネレータによるGa-68 製造法の代替法として使用されて来ています。

 

ZRレジンは高濃度(5M以上)の塩酸だけではなく、希塩酸または硝酸においてもGaをしっかりと保持します。一方、Znはこれらの条件で保持されません。この選択性により、液体ターゲット(通常は希硝酸)および固体ターゲット(通常は高濃度の塩酸に溶解)のZn ターゲット照射によるGa-68(およびGa-67) の分離に使用することができます(Figure 2および4)。

 

1M~2Mの塩酸では保持率が低くなるため、Ga溶出にとても適しています。Figure 8は、そのような分離の代表例を示しています。Znと、Cu、Ni等のその他代表的な不純物は、ZRレジンに保持されませんが(この例では高濃度塩酸で)、Gaは非常によく保持されます。1.5M塩酸等でのGa溶出によって、きれいなGaフラクションを得ることができます。

Figure 8: 溶出試験: ZRレジンによるGa分離、フラクションはICP-MSで分析

 

このGa-68は1.5M塩酸溶液を含んでいるため、ラベリングやインジェクションに直接使用するには酸性度が高すぎます。蒸発や再溶解等によってより適切な条件に溶液を置換する代わりに、TK200レジンという別のレジンをこのステップに採用することができます。TK200レジンの選択性については、個別のProduct Sheetをご覧ください。1~2M塩酸の範囲でGaをよく保持し、希塩酸または水でGaを溶出することができるため、必要な置換条件に適していると言えます。

 

Cuのような不純物はTK200レジンにおける充填および洗浄の間にしっかりと除去されますが、残った微量のZnは一部しか除去されません。つまり、ZRレジンによって事前にきれいに分離することが非常に重要です。Figure 9はTK200レジンによるGa置換の例です。

 

Figure 9: 溶出試験: TK200レジンによるGa置換、フラクションはICP-MSで分析

 

ZRレジンとTK200レジンを組み合わせて、液体ZnターゲットからGa-68を分離する例を紹介している文献はいくつかあります。Rodnick氏らは、通常の塩酸による洗浄ではなく、2M塩化ナトリウム/0.13M塩酸をTK200レジンカートリッジの洗浄に使用した例について興味深く述べています。これにより、溶出中により明確な塩酸濃度で最終的なGaフラクションを回収することができます。彼らが開発した分離技法はFigure 10の通りです。

Figure 10: ZR レジン、TK200 レジンを使用した液体ZnターゲットからのGa-68分離

      (データ提供:Rodnick氏ら)

 

液体ターゲットと比較すると、固体Znターゲットの照射の場合は製造ごとに高いアクティビティのGa-68を生成します。Thisgaard 氏らは194GBqのGa-68(精製完了時)が高純度[68Ga] 塩化ガリウム(Ⅲ) として生成され、その後PSMA-11やDOATATE のラベリングへの使用に成功したと記述しています。著者は分離に3つのレジンを使用しました。ZRレジンとTK200レジンの間にLNレジンカートリッジ(Eichrom Technologies社製)を使用して、存在し得る不純物、特にFeを追加除去します。

 

ZRレジンは、Tiに対する非常に興味深い選択性を、特にScとの関係において示しています。Figure 11はTi/Scの分離例であり、Scは10M塩酸で保持されず、Tiはしっかりと保持されています。レジンからのTi 溶出には、0.1Mのクエン酸を使用できる場合があります。しかし、溶出には溶出液の10 ベッドボリューム(BV)以上を必要とします。クエン酸の他にも、高濃度の過酸化水素やシュウ酸を利用できます。

Figure 11: 0.3mL ZRレジンによるTi/Scの分離、フラクションはICP-MSで分析

 

Tiは希塩酸を含む幅広い塩酸濃度で保持されるため(Figure 2)、 Ti/Sc ジェネレータの補助としての利用の可能性について最初に評価されました。評価のため、100mgのZR レジンカラム(0.3mL)にTi とScを含んだ少量の溶液を充填しました。その後、カラムを1mL の0.01M塩酸で5 回洗浄した後、5mLの0.01M塩酸で10回洗浄しました。

 

Scは少量の希塩酸で除去されますが、Ti は試験中ずっと保持されたままです。つまり、ジェネレータの一般的な選択性が得られるということになります(Figure 12)。

 

Figure 12: 溶出試験: 100mg ZRレジンによるTi/Scの分離、0.01M塩酸から充填、

                  繰り返し溶出、フラクションはICP-MSで分析

 

Radchenko氏らは実際の被照射サンプルを用いてこのシステムの詳細を調査しました。得られたKd値に表れているように、ScよりもTiに対するZR レジンの選択性を確認しました(Figure 13)。

Figure 13: 塩酸におけるScとTiに対するKd値(データ提供: Radchenko氏ら)

 

これらの値をもとに、大きいサイズ(4g)の被照射ScターゲットからTi(正確にはTi-44)を精製するための分離技法を開発しました。Figure 14は、彼らが得た溶出の分析データについて示しています。

 

Figure 14: 4gの被放射ScターゲットからのTi/Sc溶出(データ提供:Radchenko 氏ら)

 

ScからTiがきれいに分離されたのがわかります。Ti-44 は塩酸/過酸化水素溶液として得られました。 著者は精製したTi-44溶液を2種類のTi-44/Sc-44ジェネレータの調製に使用しました。1つはダイレクトフロージェネレータで、もう一方は著者らの推奨オプションであるフォワード/リバースフロージェネレータです(Figure 15)。

Figure 15: フォワード/リバースフロージェネレータの図解(データ提供:Radchenko 氏ら)

 

特に、フォワード/リバースフロージェネレータでは、安定したTiの非常に少ない破過と高いSc溶出率という、かなり有望な結果が得られました。得られたSc-44を高い収率でDOTAラベリングに使用できたことで、その純度の高さが証明されました。

 

Malinconico氏らは、被照射Sc-45 ターゲットからTi-45を製造するためにZRレジンを使用しました。ZnターゲットからのGa-68 精製に加えて、ZRレジンは被照射GaNi またはGaCoターゲットからGe-68分離の際にも使用できる可能性があります。前述のように、Gaは低濃度の鉱酸(通常0.1M以下)および高濃度の塩酸で非常にしっかりと保持されますが、中・高濃度の塩酸や硝酸、中~高濃度の硫酸で保持されません。一方、Ge は高濃度の鉱酸でしっかりと保持されます。特に1M~3M塩酸および硝酸において、GaよりGeに対する保持率が非常に優れていることをFigure 2と4は示しています。

例えば5Mの硫酸についても同じことが言える可能性があります。ZRレジンはこれらの条件でNiやCoに対する選択性はありません。

 

塩酸の場合、GaよりGeに対して高い選択性を持ちますが、四塩化ゲルマニウムの揮発性が高いためGe分離での使用を避けることがあります。一方、硫酸の場合、Geは揮発せず、通常使用するターゲット物質の効果的な溶解を促します。マルチグラムの被照射GaNiまたはGaCoターゲットからGe-68を分離する方法を現在最適化している最中です。

 

技法はZRレジンによる2つの連続精製ステップに基づいています。まず、溶解したターゲットを5M 硫酸へ調製し、2mL のZRカートリッジに充填します。5M硫酸で洗浄し、酸除去のためにエアパージした後、Geを希釈したクエン酸で溶出します。Geフラクションを再び5M硫酸に調製し、1mLのZR カートリッジで追加精製します。Geはもう一度、希釈したクエン酸で回収します。希塩酸(例: 0.05M 塩酸)中で最終物質を得るためには、9M塩酸に調製して、Guardレジンカートリッジへ充填後に水か希酸で溶出することで、Geはクエン酸から希塩酸へと置換られます。この技法は現在さらに最適化されています。

参考文献

1) C. Dirks et al.: “On the development and characterisation of an hydroxamate based extraction chromatographic resin”. Presented at the 61st RRMC, October 25th - 30th, 2015, Iowa City, IA, USA

 

2) S. Happel: “An overview over some new extraction chromatographic resins and their application in radiopharmacy”, Version 12/06/2021

 

3) Jason P. Holland, D.Phil, Yiauchung Sheh, Jason S. Lewis, Ph.D: “Standardized methods for the production of high specific-activity zirconium-89”, Nucl Med Biol., 36(7), 2009, 729–739; doi:10.1016/j.nucmedbio.2009.05.007

 

4) TK200 Product Sheet

 

5) Nair M, Happel S, Eriksson T, Pandey M, DeGrado T, Gagnon K. Cyclotron production and automated new 2-column processing of [68Ga]GaCl3. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2017;44(Suppl 2):S119–956.

 

6) Stefano Riga et al.: "Production of Ga-68 with a General Electric PETtrace cyclotron by liquid target", Physica Medica, Volume 55,2018, 116-126.

 

7) Rodnick, M.E., Sollert, C., Stark, D. et al. Cyclotron-based production of 68Ga, [68Ga]GaCl3, and [68Ga]Ga-PSMA-11 from a liquid target. EJNMMI radiopharm. chem. 5, 25 (2020).

 

8) Thisgaard, H., Kumlin, J., Langkjær, N. et al. Multi-curie production of gallium-68 on a biomedical cyclotron and automated radiolabelling of PSMA-11 and DOTATATE. EJNMMI radiopharm. chem. 6, 1 (2021).

 

9) V. Radchenko et al., "Separation of 44Ti from proton irradiated scandium by using solid-phase extraction chromatography and design of 44Ti/44Sc generator system", Journal of Chromatography A, Volume 1477, 2016, 39-46.

 

10) Mario Malinconico et al.: “68Ga and 45Ti production on a GE PETtrace cyclotron using the ALCEO solid target, Journal of Nuclear Medicine May 2018, 59 (supplement 1) 664.

 

11) Guard Resin product sheet

取扱仕様

ZR レジン
粒 径 容 器 入 数 商品番号

100 ~ 150 µm

ボトル

25g

ZR-B25-A  

50g ZR-B50-A
100g ZR-B100-A
200g ZR-B200-A
50 ~ 100 µm ボトル 25g ZR-B25-S
50g ZR-B50-S
100g ZR-B100-S
200g ZR-B200-S
カートリッジ(0.3mL) 10個入 ZR0.3-R10-S
カートリッジ(1mL) 10個入 ZR1-R10-S
カートリッジ(2mL) 10個入 ZR-R10-S

 

TEL:03-3862-2700(代表)

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